その程度の人間

リスカットの傷が消えない。

リスカをやめて一年以上経つ。小６から切ってた。エスカレートしたのは高校入ってから。

風呂に入るときに、体を洗う用のタオルで力入れて擦る。
毎回試している。けれど、薄くはなっても消えやしない。薄すくなるのも限界がある。

左腕の手首から肘までの間に２０本くらい痕が残っている。
だから、リストバンドしても数本はみ出るし、腕時計などのアクセサリーで隠すのも困難。

その傷跡も今は上記の方法でだいぶマシになったとは思うが。
パッと見は気づかないだろうけれど、注視すれば「切った」痕であるのがバレバレ。

夏はアームウォーマーで隠していた。傷は出来るなら一生隠したい。
僕には傷を隠さず堂々生きていく覚悟や勇気や開き直り、理解してくれる人達はいないから。

だから、今まで自分から見せたことはない。「見せない」ことが素晴らしいのではないのは承知している。
もちろん傷跡を見せることで相手を傷つけると思うし、結局のところ自業自得でどうしようもないのだけれど。
時々、痛みを共有してもらえる相手がいる人達を羨ましく思ったりする。
まぁ、もともと僕は自己顕示欲の為に切ったのではないけれど。

一回、僕にとって一番親しいであろう古くからの友人達と遊んでたときに
友人に抱きつかれる等のスキンシップの反動で、アームウォーマーが一瞬ずり落ちてしまった事がある。

その前日に新しく腕を切ったばかりだったので血がまだ出ていて、生々しかったと思う。
すかさずアームウォーマーで隠したけれど、きっと向かい側にいた友人には見えてしまっていたと思う。

友人が一瞬驚いた顔をしていた。しかし、すぐいつもの態度に戻った。
それから何度か遊んでいるけれど、一言も問われたことはない。
”僕”は友人達にとってその程度の人間なんだと思った。
きっと、友人も考えた上で干渉しない方が僕にとって良いだろうと思っての大人の対応なのだろうけれど。
それとも、他人のそのような様子に心を動かさないタイプなのかもしれない。
真意は僕には測りかねる。

別の友人に「リスカ痕はグロイから嫌だ」と言われた。
僕が当事者だって知らないはずだけど、当てつけに言ってるのかなとちょっと勘繰った。

「腕、大丈夫？」と聞かれたこともあった。
これは付き合いの浅い友人に聞かれた。リストバンドで隠してたけれど傷が見えてたらしい。
切った理由を尋ねられたので答えたら「ベタだね」と言われた。
その言葉がしばらく引っかかった。
僕を叱咤するつもりでそう言ってくれたのだろうか？ごめん、僕には負の感情しか芽生えなかった。
その後はまた何も言われなかった。

友人から僕に対する気持ちが大いにわかった。